オーストラリア、シドニーのファイナンシャル・プランニング、税務会計

2020-21年度 オーストラリア予算案

個人所得税率と低所得者所得税額控除

政府は、2022-23年度に向けて法律化されていた個人所得税減税を前倒し、2022年7月1日に開始が予定されていた減税を202071日に遡って実施すると発表しました。これによりほぼ全ての納税者が減税の恩恵を享受することとなります。

  • 2020年7月1日から税率19%の区分の上限は45,000ドルに引き上げ
  • 2020年7月1日から税率5%の区分の上限は120,000ドルに引き上げ
  • 低所得者税額控除が700ドルまで引き上げ

税率

2019-2022年 2021 – 2024年

0%

0-$18,200

0-$18,200

19%

$18,201 – $37,000

$18,201 – $45,000
32.5% $37,001 – $90,000

$45,001 – $120,000

37% $90,001 – $180,000

$120,001 – $180,000

45% $180,001 +

$180,001 +

 

法人税欠損金=タックスロスの繰戻し還付

キャッシュフロー促進のため、グループ総売上が50ミリオンドル未満の企業は、2019-20、2020-21又は2021-22年度において生じた欠損金に関して、2018-19年度以後に生じた課税所得と相殺するために欠損金を繰り戻して、法人税額の還付を請求することができます。過年度において黒字であった企業が COVID-19 の影響で欠損ポジションとなった場合に、当該企業を欠損金の繰戻 し還付をすることで企業の資金繰りを支援する案です。(下記*参照例)

*参照例

現行・既存の法人税損金
(欠損金繰越控除制度)
2020年度  赤字のため法人税額マイナス: 20,000
2021年度  黒字により法人納税額:        50,000
2021年度締めの実際の納税額➡$30,000=$50,000- 20,000過年度: 以前の会計年度において、マイナスの法人税損金額を差し引いて当年度に納税するのが現行。
新予算案
(欠損金繰戻還付制度)
2020年度  黒字により法人納税額:          50,000
2021年度  赤字のため法人税額マイナス:  ―20,000
2021年度締め還付可$20,000現行であれば、2021年度は繰越損失として確定した場合、納税義務無しで税務完了となりますが、新予算案では、過年度(2019年度~において)で黒字であった企業は、翌年度欠損金が出た場合、過年度の黒字額を限度に繰り戻しで還付が可能である。注記事項として、この制度を利用し欠損金を出した年度で還付を得た場合、翌年度以降、上記既存の法人税損金制度(欠損金の繰越控除制度)を利用できないことになる。(先に欠損金をつかってしまっているため)

また欠損金の繰戻し還付の適用は任意です。実際、この制度の適用は今年度(2020-21年度)の決算締めからとなり、企業は引続き既存の欠損金の繰越控除制度による欠損金の繰越しを選 択することも可能です。

 

即時償却制度

グループ売上高が5ビリオンドルまでの企業は、2020年10月6日から2022年6月末までに新たに取得した償却資産について、取得価額に関わらず(既存の上限は150,000ドル)、最初に使用した年度又は使用可能となった年度において全額を一括損金計上することが可能です。

中古資産に係る取得価額の全額損金計上は、グループ売上高が50ミリオンドルまでの企業に限られます。グループ売上高が50ミリオンドル~500ミリオンドルの企業は、2021年6月30日までに取得した中古資産について、150,000ドルを上限として一括損金計上が可能です。この措置により、2020-21 年度から措置が終了するまでの間にわたり企業の投資を促進し、経済活動を支援します。

※注意事項※

  • 主な対象外資産として、キャピタルワークス (建設に関わるコスト)

例:お店のリノベーション費用

  •  車 (一括償却可能だが上限あり。20年度=57,581ドル、21年度=59,136ドル)

 

企業支援補助金に関する課税除外措置

ビクトリア州政府の COVID-19 関連の企業支援補助金(2020年9月13日発表の補助金限定)は、非課税所得として法人税の 課税対象外となる。これにより、連邦政府が支給する Cash Flow Boost と同様の税務上 の取扱いとなります。

またこの措置は他州の補助金へも拡大される可能性あり。

本措置は2020年9月13日以降に発表された補助金に限られ、 2021 年 6 月 30 日までに支給される補助金に適用されます。

 

フリンジ・ベネフィットタックス関連

従業員に対する再研修のために伴う活動、社内で支給する携帯電子機器や駐車料金のフリンジベネフィットタ ックス(FBT)の免除対象とする措置が導入されます。またFBT に関する事務コストを削減するため、FBT 関連して雇用主(及び従業員)に保存義務 がある所定の宣誓事項やその他の記録に代えて雇用主が既存の記録保管。この措置は、4 月 1 日に開始する FBT の年度から適用されます。

 

若年層の雇用創出 – JobMakerプラン

政府は新たな若者の雇用支援として、雇用主は2020年10月7日以降の最大12か月間、条件を満たす新規雇用一人当たりに対し財政支援を行うことを発表しました。主要銀行を除くすべての事業が対象となります。

  • 16~30歳の失業者を雇用する事業に週200豪ドルの支給
  • 30~35歳では週100豪ドルの支給

上記のどちらも、最低でも四半期平均で週20時間以上勤務する必要があり、過去3か月のうち、求職者手当(Job Seeker)、青年手当(Youth Allowance)、または育児手当を受け取っている必要があります。 また、現在ジョブキーパーを申請している雇用者様はJobMaker支援を申請することはできかねます。

 

倒産への施策(破産法改正で再建)

破産法改正について、企業が保有する負債を効率的に処理し再建できるよう破綻手続きを迅速化します。これにより企業にかかるコストも低減するほか、債権者や雇用者 への影響も縮小できる見込み。同法改正は 30 年来の規模となり、議会の承認を得れ ば来年1月から施行となります。

 

開発事業成長の ための資金提

イノベーションと事業の成長のために、研究開 発税制優遇措置(R & D) と助成金プログラムの強化が見 込まれ製造業に対する助成は、資源、食品、飲料、医療製品、リサイクル、クリーンエネルギー、防衛および宇宙セクター のプロジェクトに優先的に割り当てられる見込みです。

政府は、R&D費税控除プログラム見直しで、年商 20ミリオンドル未満の企業による税控除の申請に 4ミリオンドルの上限を設けることを提案していたが、上限を廃止。中小企業(年間のグループ総売上が 20ミリオンドル未満)の場合、現金還付可能な税額控除率は、適用法人税率に(現案の 13.5%ではなく)18.5%を上乗せした控除率となる見込みです。税額控除の対象となる研究開発費の上限の引き上げ(1ミリオンドルから 1.5ミリオンドルへの引き上げ)を含む、 現案で提案されている他のすべての変更は維持される予定です。また政府は、19/20 年と 20/21 年の会計年度に行 われたR&D費税控除の請求が、現行法の適用対象となるために、変更の開始日を 21 年7月1日に延期しました。