オーストラリア、シドニーのファイナンシャル・プランニング、税務会計

 

倉持の視点👀

ここ数年益々情報管理の一元化、デジタル化、電子処理を通じての義務付けなどが進んでおります。
コロナ禍で対面サービス回避が余儀なくされるなか、更に電子化の動きに拍車がかっております。
以下、最新の税務関連ニュースのなかで、私が特に着眼した「① 年金積立」と「② E-invoicing=Electronic Invoicing」に関して取り上げます。 

① 2021年7月からの年金積立額の上限引き上げについて

 

Concessional contributions cap
(サラリーサクリファイスなどを通して年金積立すること)

2017年7月以降、年間25,000ドルだったスーパー(年金)の積立上限額が、2021年7月より2,500ドル増加し、年間27,500ドルへと引き上げられることとなりました。

Non Concessional contributions (After-Tax contribution)cap
(課税済のお金や投資資産を年金積立すること)

また、同時に課税済みの所得からの年金積立の上限額も10,000ドル増加し、100,000ドルから110,000ドルとなりました。これに伴い、Non Concessional contributionsのBring forward Ruleも上限額が$300,000から$330,000へ変更となります。

※Bring forward Rule:3年分の上限額を初年度に積み立てることのできる制度

注意点として、2019年に発表された67歳未満のBring forward Ruleのための州予算の拡大が未だ法律化はされていないため、2021年7月時点で65歳未満の方のみこのBring forward ruleの上限額は適用されることとなります。
また、すでにBring forward Ruleを使用している方はその期間が終了するまでは今回の上限変更の適用にはならず、追加額の枠内の追加積立もできないこととなっています。
(例として、もしBring forward rule を使用されていない方が2021年6月までに今回の上限額の$300,000を積立した場合、2022年、2023年の積立可能額は$0となります。)

Non Concessional cap threshold
(年金限度額)

同時期にNon Concessional cap threshold は1,600,000ドル から1,700,000ドル へと変更されます。これは、2021年7月1日に年金積立額が1.7Millionドル以上ある方はそれ以上の積立ができないということです。この金額はthe general transfer balance cap (TBC) で毎期変動します

 

(参照)
https://www.accountantsdaily.com.au/smsf/15391-super-contribution-caps-set-to-increase-from-1-july-2021

 (参考)
https://www.ato.gov.au/Super/Self-managed-super-funds/Contributions-and-rollovers/Contribution-caps/

https://www.ato.gov.au/rates/key-superannuation-rates-and-thresholds/?anchor=Nonconcessionalcontributionscap&anchor=Nonconcessionalcontributionscap

 

 ② 「E-invoicing」 開始時期2023年を目途

E-invoicingとは

E-invoicing(Electronic invoicing)はオーストラリア政府ならびにニュージーランドも含め、新しく統制しようとしているインボイシングシステムのことを示します。

E-invoicingは、インボイスのやり取りを、今まで紙ベースの手渡しや、PDF、アプリ、メール等によって交わされていた部分を、直接的に会計システム同士で共有するシステムのことです。

またE-invoicingによりインボイスが標準化され、違う会計ソフト上同士でも売主(サプライヤー)と買主(バイヤー)がそれぞれの会計システム上でスムーズに相互共有でき、これまで手動請求書を入力していた作業や、手渡し・メール等を介する必要がなくなり、これによって更なるデジタル化の促進とビジネス全体において事務処理等に現在掛かっている多大な時間&コスト削減・効率化を目指しております。

 

別の視点からみると、このE-invoicingのシステムが最終的に豪州全域で利用が義務付けられるようになれば、財務省や税務署などのような会計に特に関わる政府機関が、すべての売上情報を(売上が上がるところから売掛金回収まで)認識することとなります。

 税理士法人KPMGはオーストラリア政府が推進している「E-invoicing」システムの導入を当初は、2022年までにと見込んでおりましたが大手企業が出遅れているとみられております。主な理由としては、中小企業に対して取引から支払までの期間を短縮する(Payment Times Reporting Scheme)などのコンプライアンス対応等があります。

また、e-invoicing導入に関して、特に会計システムを使用していない中小企業、個人事業などからも導入コスト問題が浮上しています。

しかしながら、ビッグ4(4大監査法人)はEU(2025年までに導入予定)など諸外国の動きと合わせるためオーストラリアのe-invoicingの施行は必要としています。

今ではe-invoicing導入による資金コストをカバーするメリットの理解を広げるための、政府による教育プログラムなども必要と言われています。

こちらのシステムは、STPのように段階的に導入されることが予測されますが、今後の動向に注視していきたいと思っています。

(参照)
Big 4 urges government to slow ‘inevitable’ push towards e-invoicing | Accountants Daily

(参考)        
https://www.ato.gov.au/business/e-invoicing/
Government mulls mandatory e-invoicing adoption for all businesses | Accountants Daily
Big business payment times set to be made transparent under new law | Accountants Daily